
※本記事では、矯正歯科で一般的に行われている内容もあわせてご紹介しています。実際に適応となる治療方法や費用・期間などは、患者さまの状態によって異なりますので、当院では初回相談や診断時に個別にご説明いたします。
矯正相談で後悔しないために知っておきたいこと
矯正治療に興味があっても、最初に何から始めればよいのか分からず、不安を感じる方は少なくありません。矯正治療は一般的に2〜3年と長期間にわたるうえ、費用も自由診療として決して小さくありません。そのため、初めての相談でどのような質問をするかが、治療の理解度と満足度に大きな影響を与えます。
現在では多くの矯正歯科医院で初回相談(無料・有料)が行われています。相談の場は治療を強要されるものではなく、複数の医院で話を聞きながら比較検討することも可能です。ただし限られた時間の中で必要な情報を受け取るためには、あらかじめ質問内容を整理しておくことが重要です。
本記事では、矯正相談で確認しておくべきポイントを、落ち着いた医療文章で解説します。
矯正相談の基本的な流れを理解する
相談当日は、まずカウンセリングシートへの記入から始まります。氏名や住所といった基本情報に加え、健康状態やアレルギー、歯並びに関する悩み、希望する仕上がりなどを記載します。
カウンセリングシートは、歯科医師が患者さまの状態を把握するための大切な資料です。悩みを具体的に書くほど適切な一般説明が受けられます。例えば「前歯が出ているのが気になる」「噛み合わせが悪くて食事がしづらい」「笑ったときの歯ぐきが気になる」など、できるだけ詳細に記載することが望まれます。
その後、口腔内診察を行い、現在の歯並び・噛み合わせの状態を確認します。医院によってはレントゲン撮影を行う場合もありますが、初回相談の段階ではあくまで簡易的な評価であり、診断のための精密検査は治療を開始するかどうか決めた後に行われます。
治療方針の説明を受ける際のポイント
初回相談では、診察結果を踏まえながら、考えられる治療方法や治療期間の目安、費用の概算が説明されます。
ただしここで説明される内容はあくまでも一般的な範囲であり、治療計画の作成は精密検査後の診断工程で行われるという点が重要です。治療方法を決めるためには、レントゲン・セファログラム・口腔内スキャンなどの検査が不可欠であり、初回相談はその準備段階と考えると理解がしやすくなります。
現在の歯並びの状態について確認すべきこと

相談時には、自分の歯並びの現状を把握することが大切です。
患者さまの主な問題点
歯列不正には、上顎前突(出っ歯)、下顎前突(受け口)、叢生(デコボコ)、開咬、過蓋咬合など、さまざまなタイプがあります。それぞれ原因も治療法も異なるため、まずどのタイプに当てはまるのかを知ることが第一歩となります。
また歯並びだけでなく、骨格や顎の成長バランスに問題がある場合には、矯正治療のみで改善が難しく、外科的矯正が必要になることもあります。
虫歯や歯周病の有無
矯正治療の前には、虫歯や歯周病の治療を済ませておく必要があります。装置を装着すると清掃が難しくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まるためです。
どこまで改善できるのか
矯正治療の目的は、歯を整列させるだけでなく、噛み合わせの機能性を高めることです。治療によってどのような改善が期待できるのかは、精密検査後の診断によって具体的に説明されます。
治療方法の選択肢について質問する
矯正治療には複数の方法があり、症例によって向き不向きがあります。
ワイヤー矯正とマウスピース矯正
唇側ワイヤー矯正(マルチブラケット装置)は、三次元的な歯の移動に対応しやすいため、多くの症例に適応できます。一方、マウスピース型矯正は透明で取り外しができる利点がありますが、複雑な歯の移動が必要な場合には適応が難しいことがあります。
ハーフリンガル矯正
当院では、上顎を舌側・下顎を唇側に装着する「ハーフリンガル矯正」に対応しています。審美性と機能性を両立できる選択肢として、職業柄装置を目立たせたくない患者さまにも利用されています。
※舌側フルリンガル矯正は当院では取り扱っていません。
自分に合った治療法を選ぶために

治療方法は「見た目」「ライフスタイル」「費用」「治療期間」など、患者さまの価値観によって選ぶべき方向性が異なります。初回相談では、自分が重視する点を明確に伝えることが大切です。
治療期間と通院頻度について確認する
矯正治療は長期にわたるため、治療期間と通院目安を知っておくことが重要です。
成人の全体矯正では、一般的に2〜3年を目安とし、通院回数は24〜36回程度とされています。部分矯正では6か月〜1年程度の比較的短期間で終えられるケースもあります。
ワイヤー矯正では月1回程度の通院が必要で、マウスピース矯正では2か月に1回の通院で進行状況を確認する場合があります。ただし、マウスピース治療では装着時間の自己管理が治療の進行に大きく影響します。
費用と支払い方法について質問する
費用は矯正治療において大きな関心事です。
治療費には、初回相談料(当院:3,300円)、精密検査料(45,000円/50,000円)、装置料、処置料、保定装置料などが含まれます。総額は治療内容・範囲・期間により異なり、十分な説明のもとで理解して進めることが大切です。
支払い方法には、現金・分割払い・クレジットカード・デンタルローンなどの選択肢があり、無理のない計画を立てることが治療継続のポイントとなります。
保険適用の可能性
矯正治療は原則として自由診療ですが、顎変形症など外科的矯正治療が必要と判断される場合には健康保険が適用される場合があります。
当院は、自立支援医療機関・小児慢性特定疾病医療機関・顎口腔機能診断施設の指定を受けており、適応となる症例では保険治療を行うことが可能です。
治療中のリスクと対処法について確認する
矯正治療には、痛み、歯の動揺、歯根吸収、虫歯や歯周病リスクの増加、装置による粘膜の擦過傷、治療後の後戻りなどのリスクがあります。こうしたリスクは治療の性質上避けられないものですが、適切なフォローとセルフケアによって軽減可能です。
保定期間とアフターケアについて
治療後の歯は元の位置に戻ろうとするため、リテーナーと呼ばれる保定装置の装着が必要です。取り外し式、固定式など種類があり、適応に応じて使用します。一般的には1〜2年の保定期間を設け、定期チェックも欠かせません。
医院選びで確認すべきポイント

矯正治療は長期にわたるため、医院選びも重要です。
専門性
矯正歯科は専門性が高い分野です。資格や研鑽歴を確認し、治療説明が丁寧かどうかも判断材料となります。
院内連携体制
矯正治療中に必要となる外科的処置(アンカースクリュー埋入や埋伏歯の牽引など)に院内で対応できる体制が整っているかどうかも大切です。
通いやすさと環境
通院しやすい立地や、衛生管理の徹底なども欠かせないポイントです。
まとめ|納得できるまで質問することが大切
矯正治療は長期間にわたり、費用も必要となる治療です。そのため、初回相談で疑問を解消し、納得して治療を開始することが極めて重要です。「気になることを何でも聞ける環境かどうか」は医院選びの大切な基準になります。
当院では、患者さま一人ひとりの状態や希望を丁寧に伺い、必要な情報をわかりやすくご説明いたします。矯正治療に不安がある方や、どこから始めればよいか迷っている方は、まずはご相談ください。
著者情報
ニッコリ矯正歯科クリニック 院長 小林 弘史

略歴
2002年03月 駿台甲府高等学校 卒業
2008年03月 東京歯科大学歯学部 卒業
2008年04月 同大学 臨床研修歯科医師
2009年03月 同大学 臨床研修歯科医師 修了
2009年04月 同大学 歯科矯正学講座 Post Graduate Course 入局
2010年04月 同大学 大学院 入学(歯科矯正学講座)
2012年03月 同大学 歯科矯正学講座 Post Graduate Course 修了
2014年03月 同大学 大学院 卒業(歯科矯正学講座)
赤坂まつの矯正歯科にて舌側矯正を研鑽
東京歯科大学 矯正歯科学講座 勤務
2016年04月 同大学 矯正歯科学講座 臨床講師
2018年05月 ニッコリ矯正歯科クリニック 開院