
歯科医院で「顎のずれがありますね」「顎変形症かもしれません」と言われて、戸惑っている方も多いのではないでしょうか。
突然そのような指摘を受けると、「本当に顎変形症なのか」「手術が必要なのか」と不安になるものです。
この記事では、顎変形症の基本的な考え方や判断の目安、指摘を受けた後にどのように整理すればよいかをまとめています。診断や治療を断定するものではなく、次の行動を冷静に考えるための参考情報としてご覧ください。
顎変形症とは何か?基本的な考え方
顎変形症とは、上顎や下顎の骨格の位置や大きさのバランスに偏りがあり、咬み合わせや顔貌に影響を及ぼしている状態を指します。
代表的な例として、
- 下顎前突症(受け口)
- 上顎前突症(出っ歯)
- 開咬症(前歯が噛み合わない)
- 顔面非対称
- 小下顎症
などが挙げられます。
ただし、見た目だけで顎変形症と診断されるわけではありません。
歯並びだけの問題であれば、骨格のずれがあっても顎変形症とならないこともあります。
診断には、レントゲン分析(セファロ分析)やCTなどの精密検査が必要となり、矯正歯科医と口腔外科医の評価を経て確定されます。
顎変形症の主な種類
下顎前突症
下顎が前方に突出している状態です。
上顎前突症
上顎が前方に位置している状態です。

開咬症(オープンバイト)
前歯が接触せず隙間がある状態です。
顔面非対称
顔の左右差が明らかな状態です。
小下顎症
下顎が小さい、後退している状態です。
これらの状態が必ずしも手術の対象になるわけではなく、重症度や機能面への影響によって判断されます。

顎変形症と「骨格性不正咬合」の関係
顎変形症は、骨格性不正咬合の中でも、外科的治療が検討されることのある状態を指します。
ただし、
- 歯の移動のみで咬合改善が可能なケース
- 外科を併用しなくても機能的改善が見込めるケース
もあります。
そのため、「骨格性=必ず手術」というわけではありません。
「顎変形症かも」と言われたときの受け止め方
初診時に「顎変形症かもしれない」と言われても、それは確定診断ではありません。
一般的な流れは次の通りです。
- 初診相談
- 精密検査
- 分析・診断説明
- 保険適用可否の最終判断
この段階を経て初めて確定診断となります。
つまり、初診で言われた段階は「可能性の提示」に過ぎません。
慌てて決断する必要はありません。

顎変形症の判断基準とは?
判断基準は一律ではなく、
- 骨格的ズレの程度
- 機能障害の有無
- 咬合改善の見込み
- 医療機関の判断基準
などによって異なります。
同じ状態でも、医院によって「適応」となる場合とならない場合があります。
顎変形症の軽度・中等度・重度の目安
顎変形症と一口に言っても、すべての症例が同じ重症度というわけではありません。
実際には、骨格のずれの程度や機能面への影響によって、軽度・中等度・重度といった幅があります。
軽度と考えられるケース
・骨格的なずれはあるが比較的小さい
・歯の移動のみで咬み合わせの改善が見込める
・見た目の変化はあるが、機能障害は軽度
このような場合は、外科手術を併用せず、矯正治療のみで対応できる可能性があります。
中等度のケース
・骨格的なずれが明確に存在する
・歯の移動だけでは改善が難しい可能性がある
・機能面(咀嚼・発音など)への影響がみられる
この段階では、外科併用の適応になるかどうかを精密検査で慎重に判断します。医院によって診断の分かれることもあります。
外科的矯正治療が検討されるケース
・顎の前後・上下・左右方向のずれが大きい
・歯の移動のみでは機能的な改善が見込めない
・顔貌の非対称や咬合不全が強い
このような場合には、外科的矯正治療が検討されることがあります。
ただし、これらはあくまで一般的な目安であり、自己判断はできません。
見た目の印象だけでは軽度か重度かは判断できず、セファロ分析やCTによる客観的評価が必要です。
重要なのは「骨格のずれがあるかどうか」ではなく、
歯の移動のみで機能的改善が可能かどうかという点です。

過去に矯正治療を受けている場合の注意点
過去に矯正治療歴がある場合、顎変形症の保険適用が難しくなることがあります。
これは「すでに歯の移動治療を行った結果」である可能性があるためです。
ただし、すべてのケースが該当するわけではなく、個別判断となります。
顎変形症の診断に必要な検査とは?
診断には以下の検査が行われます。
- 顔貌写真
- 口腔内写真
- セファロ分析(頭部X線規格写真)
- パノラマレントゲン
- 歯型採得
- 顎機能検査
これらの資料をもとに分析が行われます。
矯正歯科医と口腔外科医の連携
顎変形症の確定診断には、矯正歯科医と口腔外科医の双方の判断が必要です。
単独で完結する診断ではなく、連携体制が重要になります。
顎変形症の治療方法と選択肢
外科的矯正治療
術前矯正 → 手術 → 術後矯正という流れです。
保険適用になる場合があります。
ただし、
- 治療期間が長期になることがある
- 術前に一時的に咬み合わせが不安定になることがある
などの特徴があります。

サージェリーファースト
手術を先に行い、その後に矯正を行う方法です。審美面を早期に改善できる可能性があります。
多くの場合、自費診療となります。
外科を併用しない矯正治療
重症度によっては、歯の移動のみで改善を目指す選択肢もあります。
顎変形症の治療ができる医療機関の選び方
保険適用で外科的矯正治療を行う場合には、顎口腔機能診断施設として認定を受けている医療機関で治療を行う必要があります。
複数の医療機関で相談することも一つの方法です。
顎変形症治療の費用と保険適用について
保険適用となる場合、費用負担は軽減されます。
ただし、
- 装置の選択に制限がある
- 適応には医学的基準がある
この点に注意が必要です。
顎変形症治療における生活への影響
外科を伴う治療では、
- 術後の食事制限
- 一時的な腫れ
- 発音の違和感
などが生じる可能性があります。
研究報告では、術後数か月で食事ストレスが改善傾向にあるとされていますが、個人差があります。
治療中のQOLについても事前に理解しておくことが重要です。

顎変形症かもと言われたら、まず何をすべきか?
精密検査を受ける
状態を正確に把握することが第一歩です。
複数の医療機関で相談する
判断基準は医院ごとに異なることがあります。
治療方法と費用を理解する
メリット・デメリットを整理しましょう。
生活への影響を考慮する
長期治療になる可能性もあります。
まとめ:顎変形症かもと言われたら、焦らず整理を
「顎変形症かもしれない」と言われても、それは確定ではありません。
まずは精密検査で状態を把握し、
複数の選択肢を理解し、
納得できる治療方針を選ぶことが大切です。
焦って決断する必要はありません。
ニッコリ矯正歯科クリニックでは、顎変形症に関するご相談も承っております。
日本矯正歯科学会認定医が診察し、状態を評価したうえで治療方針をご説明しています。
まずはお気軽にご相談ください。
著者情報
ニッコリ矯正歯科クリニック 院長 小林 弘史

略歴
2002年03月 駿台甲府高等学校 卒業
2008年03月 東京歯科大学歯学部 卒業
2008年04月 同大学 臨床研修歯科医師
2009年03月 同大学 臨床研修歯科医師 修了
2009年04月 同大学 歯科矯正学講座 Post Graduate Course 入局
2010年04月 同大学 大学院 入学(歯科矯正学講座)
2012年03月 同大学 歯科矯正学講座 Post Graduate Course 修了
2014年03月 同大学 大学院 卒業(歯科矯正学講座)
赤坂まつの矯正歯科にて舌側矯正を研鑽
東京歯科大学 矯正歯科学講座 勤務
2016年04月 同大学 矯正歯科学講座 臨床講師
2018年05月 ニッコリ矯正歯科クリニック 開院